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秘蜜に濡れて
第3章 愛しいくちづけ
毛布を首元まで引っ張り上げて、自分が横になって眠っていた事に気付いた。

眼を開けると、大きな窓ガラスからの夜の明かりにリビングが浮かび上がっている。

とりあえずの片付けだけされたテーブルが見えて、頭だけを起こそうとして、右手に温もりを感じた。

ソファに凭れて、撥春が眼を閉じていた。

撥春は薄いブランケットが膝に掛かっているだけだった。

自分の毛布を掛けようと右手を解いて、翻すと撥春は眼を開けていた。

声が出そうになるのをなんとか抑えて、ソファに座ったまま撥春を見つめる。

けれど、すぐ目を逸らしてしまった。

「何で?」

綺麗だからなんて言うのは可笑しい気がして、黙ってしまうと、撥春はゆっくりと身を寄せた。

「あいり」

撥春が呼ぶ自分の名前は別の名前に聞こえた。

「は、い」

「好きなんだけど、彼女になってくれる?」

目を丸くするあいりに、撥春はクスッと微笑む。

「イエスって答えしか有り得ないけど」

「は、はい」

「キスもしたい」

撥春の右手がそっとあいりの頬を撫でた。

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