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秘蜜に濡れて
第19章 想傷の真下
撥春は小さな子供を慰めるように、抱き締めて背中を撫でた。

撥春の服をぎゅっと掴んで止めどなく涙を零す。

「抵抗…したら…叩かれて…っ…変な薬も飲まされて…記憶が無くなって…気が…ついたら…秋月さんの家だった…」

「うん…あいりは何も悪くないよ」

「でも…憶えてない間に…どうなってたか…恐くてっ…」

「何も無かった、律もそう言ってたろ?大丈夫だから…何も変わらないから」

「うぅ…ふっ…」

声をあげて泣き出したあいりを、只々撥春は黙って抱き締め続けた。

やがて涙が枯れると、泣き腫らした瞳で恥ずかしそうに撥春を見上げた。

「あいり、可愛い」

「…目、腫れてないですか?」

「腫れてるし、真っ赤だよ、冷やさないとね」

目を合わせて微笑むことすら幸せだった。

もう二度と戻れないと思った愛しい人の胸の中にいる。

「…っ、撥春さん…ぁの…」

伏目がちに消え入りそうな声でそれを強請った。

「…キス…して…ほし…い、です…」



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