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秘蜜に濡れて
第19章 想傷の真下
一瞬驚いた撥春の瞳はすぐに細く緩んだ。

「もちろん、ただ…目を開けたままで、俺を見てて?」

両の頬にそっと触れた撥春の大きな掌。

まるでスローモーションの様に唇が近付いてきた。

胸の高鳴りに思わず目を閉じてしまう。

「あいり、俺を見て?」

耳まで真っ赤に染めて目を開けると、唇が触れた。

そのままこつんと額が当たる。

「キスしてるのは、誰?」

「撥春さん…」

「今、あいりを抱き締めてるのは?」

「撥春さん」

そうやって一つずつ記憶を塗り替えていく。

「撥春さん…お風呂…入りたいです、その…一緒に」

性急すぎるあいりの要望に撥春は不安の色を浮かべた。

願ってもない申し出だけれど、あいりの記憶の中には男の感触が拭いきれていない筈。

躊躇う撥春に、あいりはしがみついた。

「全部…思い出したい…」

撥春はあいりを抱き上げるとバスルームへと向かった。

お風呂を溜めながら、シャワーを捻った。

湯気に包まれるバスルームの横でぷちんぷちんとブラウスのボタンが外されていく。

「ごめ…なんか手、震えてる…」

撥春が焦ってそう言うと、あいりは微笑んだ。
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