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秘蜜に濡れて
第21章 儚いダイヤモンド
目をさますと…ベッドに撥春の姿は無かった。

ドアを開けるとがらんとした静けさだけが残る部屋。

「あいり、起きた?」

開け放たれたベランダに続く扉の向こうから、撥春が顔を覗かせた。

「どうかした?」

「もう…行っちゃったかと…思って…」

「まさか、早過ぎるよ」

時計は7時を回ったところだった。

「いい天気…」

一面、雲一つない青空だった。

撥春の腕に抱かれて見る景色はいつだって一番を塗り替えていく。

「あっ、ちょっと待ってて」

撥春は小走りに部屋へと入って行き、程なく戻ってきた。

「あいり」

「はい」

撥春は片膝を突き、あいりを見上げて手のひらの中に隠していたそれを差し出した。

深い藍のベルベットの小箱。

「これは、俺の気持ち」

あいりはそっとそれに手を伸ばす。

ぱくっとバネ仕掛けで開いた蓋のなかには…

キラキラと輝く指輪が入っていた。

「撥春さ…これ…」

「シャンパンダイヤ、だったかな?運命のダイヤっていうらしいよ」

驚きのあまり言葉を失うあいりに、撥春続ける。

「あいりを…縛り付けるつもりなんか、無いんだけど…あいりの代わりなんて誰にもなれないから、だから…俺の傍にずっと…居て欲しい」

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