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秘蜜に濡れて
第22章 Not enough
「ならば、何故同棲なんだ?その…結婚とはいかなくても…」

「はい、婚約はこの場でもお願いしたい、その前に彼女を攫っていくという許可を頂きたかったんです、僕の仕事は時間も期間も読めません、一緒に居られる時間は少しでも彼女の顔を見たいんです、僕の我儘を聞き入れて頂けますか?」

父親は長く長い息を吐いた。

「あいり、お前はどうなんだ?彼の仕事を理解できるのか?」

「はい」

「…ならば…私達から言う事は何もない」

「ありがとうございます」

「ただ、長期であいりを一人にする時は此処へ戻る事を許して貰えるな?」

「はい」

「話はそれだけか?」

「次にこの姿で此処に来るときは結婚のお許しを頂きに参りますので、今日と同じ返事を下さい」

父親は一瞬眉間に皺を寄せ、ビールを注いだ。

「心構えをする猶予が与えられたということか」

複雑な笑みを浮かべて、グラスを煽った。

「さ、食べてちょうだい」

母親が料理を勧めた時、ドアが開く。

「9の伊坂だ…」

「本物ね…」

「お兄ちゃん!お姉ちゃんまで!」

「まさか…これって…」

「二人とも、あいりに先を越されたわよ?」

母親がイタズラに二人に笑いかけると、二人は顔を見合わせてあいりを凝視した。
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