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秘蜜に濡れて
第22章 Not enough
直輝と姉のしおりも交えての食事は和やかに進んだ。

「竜もかなり飲むヤツだけど、撥春も飲むなぁ、9は皆んな強いの?」

酔っ払い始めていた直輝は撥春に絡みながら、缶ビールを傾けた。

「飲まないヤツはいないな」

撥春は笑顔で受け答える。

「撥くん、司くんって彼女いるの?」

「司…どうかな…?」

しおりの質問にも撥春は真面目に考えて答える。

あいりは隣でしおりと直輝にそれ以上踏み込んで来ないでと目で訴えるが、酔っ払いには全く気付かれない。

「撥くんはー…「撥春さん!」

しおりの質問攻めに割って入ると、直輝は腹を抱えて笑った。

何を続ける訳でもなくあいりはじっと撥春を見つめた後、しおりと直輝に向き直る。

「私の!なの!!」

「あいり、あんた飲んだわね?」

「私のなの!撥くんとか呼ばないで!」

撥春の首に腕を回し、しな垂れ掛かるあいりの頬は紅潮していた。

撥春の脳裏にも始めて日本酒で酔ったあいりが浮かんだ。

「呼び名くらいで…もー可愛いわねえ」

しおりに頬を突かれても、あいりは唇を尖らせて覇気のない威嚇を姉兄に向けるばかり。

「伊坂さんの前でみっともないケンカはやめなさい」

母親は大きな溜息をついた。
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