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秘蜜に濡れて
第22章 Not enough
「竜も泊まったよ?」

午前零時近くになるまで飲んでいた撥春を直輝は竜を引き合いに出し、泊まる様に促した。

撥春がお風呂に入っている間に片付けた和室に、同じ様に布団が敷かれた。

そっと襖が引かれ、あいりの顔が覗く。

「お風呂も、布団もありがとう」

じとっと見つめて何も言わないあいりに、撥春は笑って手招きした。

まだ拗ねたままのあいりを膝に乗せる。

「あいり?まだ酔ってる?」

「酔ってません…」

「怒ってる?」

「怒ってません」

「俺と、結婚してくれる?」

「…何で今言うんですか?」

「この前指輪を渡した時言ったのがちゃんと伝わってるかの確認」

首を傾けて、薄く開いた唇が近づいてくる。

「死ぬまで待ってます」

唇が触れたまま答えると、笑みを残して瞳を閉じ、深く深い口づけを受け入れた。





スマホにメッセージが来たのは三時間前。

竜はスマホの通話画面を開いたまま手を止めていた。

「竜」

見上げるとそこにいたのは律だった。

「一人?いい?」

気怠く頷くと、律はウェイターを呼び止めてカクテルを注文した。

「誰からの連絡待ってるの?」

「別に、待ってないけど?」

律は見透かした笑みを堪えてその名前を出す。

「あいり、笑ってたわね」

「…ああ」

「あの後…どうだったの?」

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