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秘蜜に濡れて
第22章 Not enough
鍵を差し込んで回すとカチャリと解錠する。

「…ただいま…になるんですね」

「おかえりって言わせて?」

背後から腕を回した撥春は、あいりの肩に顎を乗せるとそっと髪にキスをした。

「今すぐ…入籍だけしよっか?」

「そんな…岩崎さんや佐藤さんにお伺いたててから…」

「あいりは冷静だね、俺だけ浮かれてるみたいだ」

拗ねた様に口ぶりで、あいりの耳に髪を掛けると唇を寄せた。

「撥春さ…擽ったいです…」

「擽ってるの」

抱き締めたまま歩を進める。

「ダイニングセットも買おうかな、あとは…何が欲しい?」

「何も…何もいりません」

「あいりは無欲だね」

あいりは身を反転させると、撥春の胸に身体を預けた。

背中に両手を回し、撥春の胸に顔を埋めてその香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

「撥春さんを独り占めしてるだけで充分です」

「あいりが何も欲しがらないから、俺だけが欲深くなってくみたいだ」

あいりを抱き上げると、キッチンカウンターに座らせ、両手を横に着いて囲ってしまう。

見つめるあいりの頬がほんのりピンクに染まる。

「あいり、愛してる」

真っ直ぐ見つめられて愛を告白されれば、あいりは私もと答える。

そんな言葉で繋がるものだけでは足らない。

サイズを直した指輪も、何も縛れない。




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