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秘蜜に濡れて
第4章 time limit
夢じゃないんだ。

本当に夢じゃない。

あいりは鏡の前に立ってメールと、胸に残る紅いしるしを見比べた。

会いたい、と、思う。

だけど、撥春のいるところは別世界だ。

時間の流れも仕事内容も、想像の域を出ない。

勤務体制や就業規則なんてきっとなくて、休みも決まってるとは思えない。

そっと紅いしるしに触れる。

どうか消えないで、そう願うことしかあいりには出来なかった。



が、時間の流れは無情だった。

翌日、会社のロッカーで制服に袖を通したあいりは、胸のしるしが薄まっていることに気付いてしまった。

もうそれがキスマークかどうかも定かでない位、薄く消えそうだった。

席に着いてため息をつくと、圭吾が顔を覗かせた。

「月曜の朝っぱらからなんのため息だよ?」

心配してる割には手にはしっかりファイルが握られていた。

「木曜のプレゼン資料頼む」

「はい」

気合いを入れ直してパソコンに向き直った。
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