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鍵の音
第1章 希望は鳴る
龍は部屋のドアを開けた。
湿っぽい空気が廊下から流れ込む。
ババアが出て行ってからロクに掃除してない和室の襖戸の隙間から、奥で酔いつぶれて眠るオヤジの太い足が見えた。
その足は、龍にも見えただろうか。
「リエちゃんは、今のままでいいと思う?」
廊下に置いたままだった重たそうな荷物を背負いながら龍は私に聞いた。
「もう1時間経ったの?」
「先輩がいねぇなら、帰っても大丈夫だろ」
「ふぅん」
「ねぇリエちゃん、このままで、まともな大人になれると思う?」
「まともなって」
なれるワケがない。
し、まともっていう概念すら、分からない。
毎日食っていくのに、安全に眠るのに、それだけで精一杯で、倫理観とか、そーゆーの、ほんとに、分からない。
「俺は、もう、先輩みたいに、生きたいって思わない」
振り返った龍は、陰気な表情のままだけど、瞳だけは真剣な様子で私を見つめていた。
「兄貴に・・・・従ってばっかのくせに?」
「そんな自分も嫌だし、変わりたいと思う」
「今日だって言いなりになって無駄な金払ったのに?あはは」
湿っぽい空気が廊下から流れ込む。
ババアが出て行ってからロクに掃除してない和室の襖戸の隙間から、奥で酔いつぶれて眠るオヤジの太い足が見えた。
その足は、龍にも見えただろうか。
「リエちゃんは、今のままでいいと思う?」
廊下に置いたままだった重たそうな荷物を背負いながら龍は私に聞いた。
「もう1時間経ったの?」
「先輩がいねぇなら、帰っても大丈夫だろ」
「ふぅん」
「ねぇリエちゃん、このままで、まともな大人になれると思う?」
「まともなって」
なれるワケがない。
し、まともっていう概念すら、分からない。
毎日食っていくのに、安全に眠るのに、それだけで精一杯で、倫理観とか、そーゆーの、ほんとに、分からない。
「俺は、もう、先輩みたいに、生きたいって思わない」
振り返った龍は、陰気な表情のままだけど、瞳だけは真剣な様子で私を見つめていた。
「兄貴に・・・・従ってばっかのくせに?」
「そんな自分も嫌だし、変わりたいと思う」
「今日だって言いなりになって無駄な金払ったのに?あはは」