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鍵の音
第1章 希望は鳴る
 龍は黙ったまま、鉄製ドアを開けた。

「龍ちゃん、待ってよ」

 靴も履かないまま駆け出して、閉まりかけたドアの隙間から外に飛び出し龍の背中に叫んだ。

「まともな大人になるってどうやって、私ほんとに分からない。知ってるなら教えてよ」

 階段を下りる足を止め、龍は振り返った。

「じゃあ、行きな」

 え?
 聞き返す前に、裸足のまま、龍のいる踊り場まで階段を下りた。

「どこへ」
「学校。リエちゃん、ちゃんと学校に行きなよ」
「ガッコ、」
「俺も今年から高校に行ってる。通信だけど。勉強なんかしてもまともになれないって思ってたけどさ。でも、生きれたらいいって考えじゃ、社会ではやっていけないんだよ」

 龍はポケットから鍵を取り出した。
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