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鍵の音
第1章 希望は鳴る
 すぐに階段を駆け上がり、玄関ドアを開けた。

 床の上に転がった煙草を灰皿でもみ消してから、
埃かぶった学習机から教科書を片っ端両手に抱え、
今度は靴をちゃんと履いてから、再び玄関を出て階段を駆け下りた。

 遠くに鍵の音が聞こえる。

 精液がはりついたままの身体、生きるためには仕方ないと。
 
 諦めるには早かったのかも知れない。
 今日1日食えたら、今日1日安全に寝れたら。
 それが一番、大事。
 
 でも、本当は嫌だって。
 本当は、まともに生きたいって思ってて。
 虚しさとか悔しさとかから、目を逸らしてただけだった。
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