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ジェミニの檻
第8章 endgate
じわっと、視界が歪む。

由岐は許してくれなくて、志貴にも断られて…六花は訳もなく溢れる涙を必死に堪えた。

ズッ…と鼻をすする。

「バカだろ?泣く事?」

背後からぎゅっと志貴が抱き締める。

「泣、いてない…っ」

「あ、そ」

ぱっと身体が離れると、六花はそっと振り向いた。

志貴はまた本に視線を落とす。

「何?」

「…行く?」

「…7月の最終週の水曜日だな」

「うん」

「詳しい事はちゃんと連絡よこせよ?」

「うん!」

六花は思わず笑顔を零して早速えれなと宗治にメールを送った。


「閉館時間です」

そう告げるとぞろぞろと人が出て行く。

「池内さん、あとお願いできる?私今日、塾で」

「あ、はーい」

書庫の鍵を締め、鞄を手に窓の戸締りを確認して歩く。

「…志貴?」

ずっと同じ場所にいたのだろうか。

窓の下の壁に凭れて眠っている。

「志貴、起きて、もう閉館だよ」

穏やかな寝顔に何時もの口調はない。

影を作るほど長い睫毛。

そっと指先で前髪を掻き上げてみる。

少し開いた唇からは規則正しい寝息。

六花は覗き込む。
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