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奴隷 裕美子
第4章 奴隷調教の軌跡
駅前の喧騒から少し離れた静かな住宅街の一角に、裕美子の住むマンションはあった。建物のエントランスに設置されたオートロックのドアの内側に俺を招き入れるのにためらいの素振りは見せなかったが、隣に立っているだけで裕美子の心臓の鼓動が聞こえてくるかのようだ。両肩は上下に波打ち、呼吸も荒い。唇は、からからに乾いていることだろう。

エレベーターを降り、「703」と書かれたドアの前に立つ。

「ここです」

そう言って鍵穴にキーを挿そうとするのを、俺は制止した。

「ここに膝まずけ」

裕美子は一瞬目を見張るような表情をしたあと、周囲を見渡した。玄関ドアのつらなる廊下に他に人影がなかったのは裕美子には幸運に思えただろうか。あるいは、他に誰かいればこの場で膝まずくのは許されるのではないかと期待したか。もちろん、実際には誰がそこにいようが許されるなどということはないのだが。俯いて膝まずく奴隷を真上から見下ろすのは、いつでも気分の良いものだ。

「裕美子」

「はぃ」

「裕美子は俺の何だ。言ってみろ」

「・・奴隷・・です」

俺を見上げる裕美子の目が潤む。

「返事ははっきりと、だ。何度も言わせるんじゃない」

「・・ごめんなさぃ。裕美子は貴方の・・・いぇ、ご主人様の奴隷です」

「声が小さい。それに、俺から目をそらさずに言え」

「はぃ。申し訳ありません。・・わたし、山咲裕美子は、ご主人様の奴隷です」

「このドアをあけて俺を部屋に入れたら、もう後戻りはできない。いいんだな」

「はぃ・・裕美子を奴隷として、そばに置いてください。お願いします・・・」

俺は膝まずけとしか言っていないにも関わらず、裕美子はこう言いながら自分から正座し、いつ誰が通るかもしれないマンションの廊下の床に手をついて深々と頭を下げた。やはり裕美子はとびきりのマゾ牝だ。俺のようなサディストの加虐心を本能で煽って来る。
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