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おれは手芸部
第1章 おれは手芸部
 グラウンドに響く日本人の青春が、耳の中、ううん、学校全体を包んでいる。
 ナを疎外するように、日本人だけで、日本人だけを、包んでいる。


「ナはナのままやで、日本籍になるだけでって言うたんやけどな。はじめて誰もおらんウテオッパんちに連れて行かれたあとにな、別れ際にな、あんにょんって言う前にな、ウテオッパに言うたんやけどな。なんも変わらんはずやのにな」


 ソンギはさっきナからフェルトの塊を奪って手にとってしげしげ眺めていたときと同じ表情で、ナを見てる。


「だってナが日本人になってもな、ウテオッパが布団の中で見たナとはな、なんも変わらんねんで。ナが日本の高校に行こうが、ウテオッパとおなじチョーゴに行こうが、あのときとなんにも変わらんはずやねんで」



 やめや、そんなん言うん。
 ソンギはナから目を逸らして、ちくちく、慣れない手つきでフェルトと縫い針を動かしている。



「でも別れよとは言われてへんから。ユファオンニのがやらしかったとは言われたけど、でも、リョヒャンともヤレたしもう気が済んだわ、とは言われてへんから。それに、ユファオンニがくれたみたいな、こんな、だっさい、お守りかなんかしらんけど、こういうのを、リョヒャンにも作ってほしかったて言われたから」



 もうやめや。
 ちくちくちくちく、ソンギのフェルトと針は動いている。



「せっかく付き合ってんのにリョヒャンは舞踊ばっかで全然俺に構ってくれん言うて、ウテオッパが浮気した、ユファオンニがくれたみたいな、ウテオッパしか見てやんような、こういうのを作ってほしかったて、言われたから、別れよ言われたわけじゃ、ないから」



 やめや。




「リョヒャン、お前ソンベに振られたって、いい加減認めえや」



 
 ちくちくは動いていない。
 ざわざわざわざわ、日本語ばっかり、動いている。
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