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Black velvet
第6章 革と 金具、そして足枷の先には。
ついでに 絵も取り返しておこう、
早いほうがいいと 言う俺に
カズは ゆるゆると首を横に振る。


「なぜ」


「脱いだけど 描くときは
腰のとこは 隠してた。
さすがに おれだって分かりそうな絵だから」



「それにしても ダメだ。
絵は 買い上げる」


とりあえずクローゼットへ、と
向きを変えた俺の腕を 掴んできた。


そんな…と言い淀むけれど
待ってはいられない。


「頼むから、いまは時間がない。
聞き分けてくれ」


惚れているから 護ってやりたい、
お前を傷つける可能性は
排除しておきたいと
言いそうになって 止めた。


それを言ったら 余計に
頑なになるタイプのように思えて

いまは、とにかく
早く絵を取り戻すことを優先する。


「俺は お前を全部欲しい。
それが卑しいヤツの描いた絵でも、だ」


腕をつかみ返して、 立たせたら
服を放ってやり 革紐を解く。


「俺も 準備してくる」




身につけたら
小物も取り出して 腕に抱え

部屋に戻ると 窓が大きく開いていて
風が吹き込んだ。 カズは…居ない。


さすがに この短時間で、服を着た後
庭を囲む塀を 乗り越えたとは思えず
慌てて 玄関から出てみると

門を開けようとしている
後姿が見えた。


俺の気配に ぎくりとふりむく、カズと
彼に懐いて まとわりついているベル。


「ひとりで どこへ?」


「…わからない」


「まぁいい、 本当に急ごう」


ベッドルームへ連れ戻すと
窓を閉めさせ
俺も 着替えを済ませて、車へ。


途方に暮れているような横顔に
信号待ちで 問いかける。


「俺が怖くなったか」


友人だと思っていた男を
脅す口調に、脅えたのだろうか。
さほど 激してはいなかったが。


ううん、と ちいさな返事のあと
彼は呟いた。


「こんなの つらすぎる」



「そんなに 大事な友達だったのか?」
信頼を 穢されてまでも。


「そうじゃ、なくて…
おれはなんにも 役に立たない。
sexくらいしか できない。
…こんなにしてもらっても
…すきに なっちゃいそうでも」







































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