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Black velvet
第6章 革と 金具、そして足枷の先には。
部屋の中は 雑然としているが
不潔ではなく
立てられたキャンバスに
その絵は あった。


「ナイフを」


男から受け取ったナイフで
カズは…その絵の肩から下を
無言で 切り裂いた。

頬には 涙がつたっていた。




「もういい。 帰ろう」


抱き寄せて、あやしながら告げると
カズは 「ごめんなさい」と 言った。


肌の露出した部分を 切り裂けば
それでいいと 思ったのだろう。

「悪いが 俺は…それほど
優しくはない」

絵の枠を 片手に取った。
こんな虚ろな表情のカズを
ここに置いたままにはしておけない。
…たとえ 紙の中にいても。



「その代わり、あいつが
またなにかしても
この絵の画像が流出しないかぎり
巻き添えで訴えることはしない」


茫然とする男は 何も言わなかった。
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