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Black velvet
第7章 細く光る、鎖。
それほど濡れたわけではないが
犬の身体を ざっと拭いてやり

部屋に入ると
自分の上着の水滴も タオルで払った。


バスタブに湯を張ることにして
設定し終えた時
テーブルに投げたした電話が
点滅と振動で、着信を知らせる。


「どうした」


「ねえ…たすけて」


押し殺した声は 震え
怯えていた。

背景には 水音のような
雑音が聴こえる。



「いま どこに居るんだ」
同伴で ホテルにでも連れ込まれたか、と
この段階で最悪な事態を思い浮かべた。



「おみせのうえの
事務所ってことになってる部屋、、

シャワーするからって
脱衣所に駆け込んで
中から鍵をかけたけど
…いつまで待ってくれるか」




「店って、いつものクラブか?
同伴は」



「待ち合わせ場所には
店長が居た」


「店長に襲われそうなんだな」


頷いているのか、声がしない。


「どうなんだ」


「う、うん。 そう」


俺は 脱いだばかりの上着と
鍵を握った。


「いいか、すぐに
警察へ 緊急連絡しろ。
通報がばれそうで声が出せない時も
なるべく通話は切るなよ」


「わかった」


「俺も そっちに行くから」


そして通話を切った。

念の為 ここからも
いま助けを求められたことと
カズの居場所(部屋番号は
分からなかったが)を伝えて
家を出る。


…細く光る鎖をつけた
あいつの脚は、震えているだろうか。







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