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Black velvet
第4章 双方向の印
紐を 片脚ほどいたのは
両脚繋いだままだと、
寝返りもうてないからだ。

ただ身体が窮屈なだけでなく
仮に、俺に なにかあって
帰りが遅くなった場合には シャレにならない。


カズは 苦痛を望むMではない。




両脚 繋いでいたところで
手は 縛っていなかったのだから
逃げようと思えば 逃げられるのだが

片脚ほどいたあと、俺は その肩を
跡がつくくらいに 咬んだ。


「逃げるなよ」


その言葉に 妖しい瞬きをして
カズが両腕を伸ばし、 俺の首をひきよせた。


「あなたもね」


その跡は、俺がつけたのよりは
おそらく 浅いのだろうが

咬んだまま 唇の中で蠢いた舌は
俺を完全に虜にするほど、艶かしかった。






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