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負い目
第1章  
 灰色に支配された薄暗い部屋の中でわたしを見据えるテッちゃんの瞳が。
 自分の欲望を現実にするという短い時間のなかだけは。
 その時間のなかだけは。
 命を燃え尽くすかのように、羽化したあと一週間しか生きれない蝉の声みたいに。


「顔とかむねにセーエキぶっかけて、もちろん中にも出して。俺もあの子らもイキまくってなんかもうわからんことなったらな、最後、俺に殺してくれって声が聞こえただけで、それがなかったら、まさかそんな惨たらしいことしたいなんて夢にも思ってないねんで。どうせいつか死ぬなら最高にキモチイイ状態のまま死にたいねんって。老いぼれてヨレヨレになって死ぬくらいなら今このサイコーにめちゃくちゃに気持ちいい状態で死にたいって。でも自分では死ねんから俺に、キモチヨクしてもらったうえで殺されたいって。そんなふうに俺を呼ぶから行ったっただけやのに。俺はしたくなかってんで?なんでやろな。自分から俺をそうやって呼んどいて、やめて、殺さんといてって言うんよな。おかしいよな?」


 力強く、輝いている。



「俺な。お母さんに更正するって約束してん。仕事も紹介してもーたから明日面接や。俺やって、もうアンナトコ戻りたくないわ。中学よりヒドイ場所やったからな。迷惑かけたぶん真面目になってお母さん助けたらんと」


 アイスピックの先端が近付いてくる。


「あぁ、そうや。死んだあの子の両親にも聞かなあかんことがあるしな」


 私に向かって、近付いてくる。


「あの子、ションベン漏らすくらいヨガってたな。でかい声出すから興奮した。5回もシタんやで。最後はどっから何が出てるかわからんかった。あっこまで俺を求めるなんて、すげぇ淫乱やったんやろな性根が。どんな教育したらあんな子になるんですかって聞かなあかんわ。捕まったときは忙しくて聞かれんかったからなぁー。ずっと心残りやってん」



 大きな手が髪の毛を掴む。
 左目角膜に突き立てられた鋭利な先端は、ぼんやりと黒く映って、ピントが合ったときはじめて、まるで命を燃やす蝉の目のようにきらきら輝いていたことを、わたしは知った。



「な?俺、更生への一歩を立派に踏み出してるやろ?」



 耳の中に夕立に混じった、蝉の声が響いている。



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