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負い目
第1章  
 ひりひり痛む股を隠して日が暮れた頃団地に帰った。
 毛羽立った畳の上で土下座したのは、今度はお母さんだった。
 窓の外では、蝉がまだしつこく命を燃やしていた。



「は?テッちゃんが一緒に住むことになったって?」


 
 それは夏の一定期間だけ続く恒例行事。夕立に似たものだろう。
 だから、日に焼けた肌と白いままの肌のコントラストを狭苦しい四畳半の板間の上でリョンちゃんの視線の前に晒したときも、室外機の音に混じる蝉の声は雨粒音のように室内に響いていた。
 まだ根元まで咥え込めない股の奥からオリモノが溢れてわたしとリョンちゃんを守っている。
 痛みを伝えるたびに、日の目に当たらない犯罪者の顔が妙にクリアに浮かんで見えた。
 
「そんな動かんとって」
「もう終わるから、もうちょい待ってや」

 や、奥が、痛ッ!いた、ちぎれそうで、いたい。イタイよ、リョンちゃん。
 うるせぇなぁ。黙っとれよ。夏休みももーすぐ終わるんやで。そしたらまたしばらく出来んよおになるやろ。手加減なんかできるかあってカンジになんの分かるやろ?もう終わるって。コレくらい好きにヤラせろよ。おかんから金ふんだくってるクセに。あーうぜー泣くなや。もう終わるから、あとちょっとだけ待ってって。
 

 ふうーっと息をついて、リョンちゃんの動きが止まる。
 半分しか満たされない快楽は、リョンちゃんにとってどれほどの意味があるのだろうか。
 考えながら、繁殖目的ではない射精への疑問にまた蓋をする。


「で?マジでテッちゃんが一緒に住むん?」
「・・・行くとこないからって」
「マジかよ。いつ決まったん?おかんから聞いてないけどな。ちゃんとおかんに言うたんかな?叔母ちゃん」
「うん・・・」

 まだ言うてないと思う。
 パンツをずり上げるリョンちゃんの背中にそう言えなかったのは単純に、今頃になって部屋のドアが閉まっていない事実に気付いたからだった。

「てか、あのな。言うとくけどな。絶対身体とか見せんなよ。俺がどんだけ苦労しておまえの処女を・・・テッちゃんに触らせんなよ。おまえは俺だけのもんやねんからな」

 学校名のロゴが入ったジャージ上下が床の上で抜け殻のように落ちて転がっている。
 太い眉は妄想の中の疑念に歪んで、じきにわたしの頬を打つというかたちで現実に現れた。
 短い悲鳴はまるで他人の声のようだった。
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