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負い目
第1章  
「よお聞けよ。おまえゴーインにされたら股開きそうやから言うといたるわ。俺以外の男とヤッたりしたら、絶対許さんからな」

 リョンちゃんの嫉妬が開いたままのドアから、叔母ちゃんが韓国ドラマを見てる1階にまで響く。
 それでも叔母ちゃんが覗きに来ないのは、捕まえてしまった籠の中の蝉に興味を示さない虫取り小僧のようなもので、リョンちゃんという籠の中ですでに飼い慣らされているわたしに何かしらの興味を示す必要性が皆無だからだろう。

「絶対絶対許さんからな。そんなことしたら俺、テッちゃんみたいにおまえを殺すからな」

 大きな手のひらが妄想の中の嫉妬心を原動力にわたしの首筋を掴む。
 リョンちゃんがわたしの身体の上で妄想を現実のものとしたときも、同じような手順だったことを思い出す。

 しないシナイしないよおっ、リョンちゃん以外とはゼッタイしない、リョンちゃんだけだよ、ゼッタイだよ、苦しい、おねがい、離して!
 
 ばたばた手足を動かすと、リョンちゃんのあちこちに当たる。
 遠くにわたしの声が聞こえる。
 なのに、ゴーッと響く夕立の音だけは、鮮明に耳に届いていた。
 それが蝉の声だと気付いたとき、割れ目の奥からセーエキが垂れ落ちてリョンちゃんの布団を薄いピンク色に汚していた。



「ほんまやな?裏切ったら覚えとけよ」



 もう1度、家中に強く響いた悲鳴は、リョンちゃんのお母さんの耳にも、届いただろうか。
 届いたとしたら、どんなことを、リョンちゃんに対して感じたのだろうか。







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