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禊(みそぎ)
第2章 虚像
ちょうど一年前、英司君が訪ねて来た夜、旦那の帰りが遅い事を不思議に思ったのか、私に訪ねてきた。
「兄貴遅いね?残業?いつもこんな時間なの?」

そう言いってリビングの時計に目をやった。

夜の11時をまわっていた。

私が動揺した顔をして、その場しのぎの理由を考えていたのを彼は見逃さなかった。

「なんかあったの?姉さん直ぐ顔に出るから」

「俺で良かったら話し聞くよ?」

そう言いながら私の目をじっと見て、視線をそらさない。

勘の鋭い刑事に全てを見透かされた様な感じだった。嘘を並べるだけ無駄に思えた。

「英司君・・・・。」

そう言った瞬間、涙がこぼれていた。

泣くまいと思えば思うほど大粒の涙が頬を伝う。

涙で何も見えなかった。
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