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水蜜桃の刻
第2章 欲情


相変わらず、彼氏とはほとんど会えていなかった。
それどころか、彼と同じ高校に行った友達からは


『あいつ、クラスの女子となんかすごく仲良くしてんだけど。
あんたたち別れたりしてないよね?』


そんなメールが入ってきたりしていた。


『別れてないけど、あんまり会えてない。
忙しそうで連絡もあんまりないよ』


事実を返し、ぼんやりと。


なんだろう。
これってもしかして終わる兆候だったりするのかな。


そんなふうに思い、溜め息をつく。
もやもやしたものを感じながらもどうすることもできず、今度いつ会えるかメールした。

しばらく経ってからの返事は


『しばらく無理そう。
部活マジ忙しすぎ』


……私はもう、何も返さなかった。


4月は、毎日のようにやりとりしていたメール。
気づけばいつしかそれはそうではなくなっていて。

友達からの、彼が例の子とさらに親密そうになっているとの報告もあったし、自然消滅──という言葉が頭の中をちらつき始めていた7月の頭。
指導の合間の休憩中に、私は先生に相談してしまっていた。

彼の言動。
友達の言葉。

先生は、私に彼氏がいたことにまず驚いて、それでも、はっきりさせたいならちゃんと相手と話をした方がいいと言った。
私の頭を撫でながら「頑張れ」と、あの笑顔で。


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