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水蜜桃の刻
第10章 高揚
「じゃあ、またそのうちごはんでも一緒に」
お店を出て、先生がそう言ってくれた。
こくんと頷き、先生を見る。
私は今日、あのことを聞こうと心に決めていた。
自然に答えてもらうにはどう聞いたらいいんだろうと考え、結局ありきたりなことしか思い浮かばない自分にがっかりしつつも。
もしかしたら私の意図になんてすぐ気づかれてしまうかもしれないけど──と思いながらも。
……それでも、それを口にしようと。
緊張で心臓がどきどきとうるさく鳴っている中
「もう大人だからお酒でもいいよ?」
何でもないことのように続けた言葉。
「ああ……そうか、うん、飲みでもいいね。
そうしよう。連絡する」
それをまず、受け入れてもらえたことに安堵する。
そして、あ……とまるでそれに今、気づいたかのように続きを口にした。
「……夜はでも、やっぱりまずいかな?
異性とふたりで飲みにだなんて、彼女……嫌がったりしない?」
ちゃんと言えたことに少しほっとして。
それから、今の不自然じゃなかったよね? と自問自答する。
そしてあとはただ、願った。
どうかお願い。
……先生に、彼女がいませんように────。