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水蜜桃の刻
第10章 高揚


そんなふうに思い、ふふ、とこぼれてしまった笑み。
慌てて辺りを見回し、誰にも見られていないことを確認した。
誤魔化すように口元に手を持っていき、少し俯きながら歩く。


……先生、私のこと彼女にしてくれないかな。
私だけの先生になってくれないかな。


想いはもう、そんなところまできているのを自覚する。

先生とのやりとりを思い出すようにしながら、少し離れた駐車場までの道を歩いた。


もう……先生ったら言い方がなんだか意地悪なんだから。


さっきの『一般論』のくだりを思い返し、そんなふうに思い、苦笑する。


そうだよね。
先生と元教え子が飲みにいくなんて、きっと普通。
たとえ結婚してても、彼女がいても、それはよくあることだよね。
……まあ、先生にはどっちもいないらしいけど。


ふふ、とまた笑ってしまう口元。


──なのに。


「あ」


突然、それに気づいた私の足が止まる。


『元教え子と飲むなんてよくあること』


それは先生のさっきの言葉。
あのときはただ流してしまったけどこれってもしかして、先生のそのままの気持ち……じゃないよね?


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