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水蜜桃の刻
第2章 欲情
その想像は、やがてどんどんエスカレートしていって。
先生も、彼女とセックスしてるのかな。
……当然、してるよね。してないわけないよね。
そんな軽い内容から。
先生はどんなふうに女の人を抱くんだろう。
先生は気持ちいいときどんな顔するんだろう。
そんなふうに深い内容まで考えるようになっていた。
たとえばそう、先生が私の真横で……すぐそばで指導する時。
先生の指が、目の前のテキストの文をなぞるように動く。
降ってくる、その低い声。
質問したとき、「ん?」と私を下から見上げるようにして見てくるその目。
あの最中は、この指がどんなふうに動き、この声がどんなことを囁いて、この目はどんなふうに見てくるのか──止まらない、そんな妄想。
それでも、できるだけ。
そう……できるだけ、考えないようにはしていたはずだった。
だって、そんなふうに考えてばかりいたら、勉強にならない。
気を抜くと、そんな妄想にばかり意識がいってしまう自分を戒めるように、必死で目の前のテキストに集中した。
上がっていく成績。
得ていく信頼。
『すごいね』
先生が笑いながら私の頭を撫でてくれる。
明らかな子供扱いのその仕草に、私は自分の頭の中を欲望を隠して……そうしてやっぱり、子供のような無邪気を装いながら、笑顔で応える。
……自慰のときに思うのは、もう別れた彼としてきたセックスじゃなくて、想像の中の、私を抱く先生の姿だったのに。