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水蜜桃の刻
第11章 その視線


「うん、またね先生」


そう答え、手を振りかけたとき


「あれ? 鈴木さんじゃん」


後ろから聞こえた声に振り向く。
本郷くんと、あと見覚えのない男の子が2人、少し離れたところから私の方を見ていた。


「偶然!」


本郷くんが小走りで近づいてくる。


「誰?」


職場の同僚、と答えれば、ふうん……と先生は彼へと視線を向けた。

目の前に立つ、本郷くん。


「俺たち3人で飲んでて。
今から次の店行くとこなんですよ」

「そうなんだ」

「鈴木さんは?」

「あ……私も知り合いと飲みにきてて」


ちら、と先生を見る。
本郷くんもそちらに視線を向けた。


「……こんばんは」


先生が挨拶し、本郷くんも、どうも……とお辞儀を返す。


「違う店にでも行くところですか?」

「ううん、もう帰ろっかなって……」


ね? と先生を見たけれど、先生は何も返してくれない。
そんな先生の様子に、少し心のざわつきを覚えたときだった。

  
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