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水蜜桃の刻
第11章 その視線


「だったら、俺たちと今から飲みません!?」


突然の本郷くんの提案に、え……と戸惑う。


「行きましょうよ、ね?」

「……でも」


思わず、先生を見上げた。


「だってもう帰るところだったんですよね?」


そんな私の視線に、本郷くんがさらに言う。


「じゃあいいですよね?」


そして、先生の方を見て、そんな言葉を。


「ちょっと本郷くん……!」


何でそんなこと先生に聞くの────。


どうぞ、なんて何でもないことのように言われたら、きっと私は悲しくなる。
だから先生が何か口にする前に慌てて彼に言った。


「わかったから……! でも少しだけだからね?」

「やった! じゃあ早く行こう、鈴木さん!」


本郷くんは先生に、失礼しましたーと言って軽く頭を下げ、そして私を友達のいる方へと促した。


「あ、じゃあ……先生、またね」


胸の前で小さく手を振り、本郷くんに促されるままに私はついて行く。


……背中に少し視線を感じたのは気のせいだったのか──振り返れなかった私には、わからないままだった。




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