この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の刻
第11章 その視線
「だったら、俺たちと今から飲みません!?」
突然の本郷くんの提案に、え……と戸惑う。
「行きましょうよ、ね?」
「……でも」
思わず、先生を見上げた。
「だってもう帰るところだったんですよね?」
そんな私の視線に、本郷くんがさらに言う。
「じゃあいいですよね?」
そして、先生の方を見て、そんな言葉を。
「ちょっと本郷くん……!」
何でそんなこと先生に聞くの────。
どうぞ、なんて何でもないことのように言われたら、きっと私は悲しくなる。
だから先生が何か口にする前に慌てて彼に言った。
「わかったから……! でも少しだけだからね?」
「やった! じゃあ早く行こう、鈴木さん!」
本郷くんは先生に、失礼しましたーと言って軽く頭を下げ、そして私を友達のいる方へと促した。
「あ、じゃあ……先生、またね」
胸の前で小さく手を振り、本郷くんに促されるままに私はついて行く。
……背中に少し視線を感じたのは気のせいだったのか──振り返れなかった私には、わからないままだった。