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水蜜桃の刻
第11章 その視線


男の子たちの場の中に自分がいることが新鮮で、私はその雰囲気をゆっくりと楽しんでいた。

佐藤くんはどうやらお調子者のようで、何かを口にしてはほかのふたりに突っ込まれてばかり。
私にもいろいろと聞いてきたけど、本郷くんがさりげなくフォローしてくれたりして、不快な思いとかそういうのはしなくて済んだ。


でも。


「ねえ、鈴木さん!」


突然、にやにやと笑いながら私にふってくる。
なに? と言葉を返せば


「鈴木さんって彼氏いるんすか?」


佐藤くんのその言葉に、思わず声を詰まらせた。
何故か、しん……とする3人。

私を見る佐藤くん。
下を向いた本郷くん。
そんな本郷くんを見る、太田くん。


「え……と」


どうしようか考え、結局、佐藤くんと視線を合わせて


「いない……けど?」


呟くように答えれば
マジ!? と佐藤くんが興奮した様子で続ける。


「じゃあ! 薫、どうすか!?
こいついいやつですよ~! 」


指さされた本郷くんが慌てたように顔を上げる。


「お前なに言ってんだよ!」


焦った様子で、彼に手元にあったおしぼりを投げつける真似をする。


「え!? 何? だってお前────」

「いいから!」


とうとう、本当に彼めがけて軽く投げつけられたおしぼり。
避けようとした佐藤くんの手がグラスに当たって倒れ、まだ少し残っていた中身がテーブルにこぼれた。


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