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水蜜桃の刻
第11章 その視線
「うわ!」
「おい、ふざけすぎだって!」
太田くんが佐藤くんに向かって言った。
「すいません……!」
そして我に返った様子で本郷くんが私にそう謝ってくる。
「あ、ううん、平気!」
私はバッグの中からティッシュを取り出し、濡れたテーブルを拭く。
「かかってない?」
佐藤くんに聞くと、大丈夫とのことだったので、使い残ったティッシュをバッグにしまおうとしたときだった。
スマホにちょうどLINEが入ってきて、それを確認すると────。
『家に着いたら連絡して。心配だから』
……先生からだった。
その優しい文面に、さっき少しだけ感じた胸のざわつきへの懸念はなくなっていた。
人と会っているときにスマホをさわるのは失礼な気がしていつもはしないのだけれど、どうしてもすぐに返事をしたくなった私は本郷くんに
「ごめん。ひとつだけLINE返していい?」
そう断った。
「……さっきの人ですか」
「あ、うん。
心配だから帰ったら連絡して、って入ってきたから……」
そして私は先生に
『さっきの同僚とまだお店にいます。
もう少ししたら帰ります』
そう、返信した。