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水蜜桃の刻
第11章 その視線
スマホをしまうと、感じた視線。
本郷くんが、私を見ていた。
「……何?」
「いや、何でもないです……」
その目が逸らされ、ビールのジョッキへと動く手。
「すいませんでした~!」
佐藤くんから声をかけられた私は彼へと視線を送り、ううん、と答える。
「ほんとこいつ、昔から落ち着きなくて」
太田くんが溜め息をつく。
「何度迷惑被ったことか……」
呟きに、そんな!? と嘆く佐藤くん、そして笑う本郷くん。
雰囲気は、自然に戻っていた。
それから少しして、私は化粧室に立った。
済ませて、手を洗いながらさっきの先生のLINEを思い出す。
何か返事きてるかな────。
そう思いながら、バックの中からスマホを取り出す。
……え?
確認した私の手が、そのまま止まった。
何、これ……。
心臓が早鐘を打ち始める。
ホテルの名前と、部屋番号。
先生からのメッセージには、それだけが書かれていた。
どういう、意味────?
スマホの画面を見つめたまま、私は少し固まってしまっていた。
そのとき、コンコン、とドアをノックする音がして、弾かれたように顔を上げる。
慌ててバックにスマホをしまい、化粧室を出た。
パニックに近い状態のまま、席に戻る。