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水蜜桃の刻
第11章 その視線
「あ、きたきた!
鈴木さん次は何飲む~?」
佐藤くんの言葉にもろくに答えられない。
先生、これ……来いってこと?
ここに?
……ホテルに?
かあっと、顔が熱くなる。
嘘……ほんとに?
さっきまで会っていた先生の姿が、浮かぶ。
その顔が、その指先が……喉元が。
縋りつきたいと思った腕が。
抱きつきたいと思った背中が。
先生……っ────。
きゅうっと疼くのは、心か、身体か。
会いたい。
先生に、会いたい────……!
「ごめんね、私……帰る」
呟くように口にしたその言葉に、え……? と本郷くんが反応した。
「……何で? まだこれからでしょ?」
私を見て、そう言ってきたけど
「ごめんね?」
もう、私の意識は先生へと向かってしまっていてここにはなかった。
財布からお金を出し、私の分、と本郷くんに渡そうとしたけれど、受け取ろうとしない彼。
だったら──と太田くんに差し出すと、彼は本郷くんへと視線をちらりとやりながらも、受け取ってくれた。
「楽しかった。みんな、ありがとね」
三人に向かってそう言い、じゃあ……と席から離れ、私はそのまま店から出る。
タクシーに乗った方が早いはずだと、広い道路はどっちの方向か、店の外で辺りを見回したとき、後ろから突然腕を掴まれた。