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水蜜桃の刻
第12章 切迫
「……別に」
え……? と、その言葉に私は混乱する。
先生の言葉の意味が理解できなかった。
「別に呼んだりなんかしてないよ」
繰り返される、そんな言葉。
「……え、だって……!」
先生──私に、ホテルと部屋番号……送ってきたよね?
「来てなんて俺は言ってない」
私は言葉を失った。
あんなの送ってきて、呼んでないって何?
あれは、来いって意味じゃなかったの?
頭の中がぐるぐるする。
まるで眩暈のように。
……私が、おかしいの?
わからない。
先生の言葉の意味が。
「透子ちゃんが来たんでしょ?」
「え……」
「……俺に、会いたかった?」
「────!?」
かあっと、一瞬にして顔が熱くなる。
さすがに感情が高ぶった。
「……何それ……先生、ひどい……」
何が? そんなふうに言わんばかりに私を見るその目。
「だって……だってあんなの送られてきたら誰だって、ここに来いって意味かと思うよ、なのに────」
ぐっ、とこみ上げるものを感じ、一度深く息を吐く。
「なのにまるで私が勝手に来たみたいなそんな言い方……」
……どうしよう。
何だか泣きそう。
私、先生にからかわれたの?
先生、私をからかったの?
……なんで?
なんでそんなことされなきゃいけないの────?