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水蜜桃の刻
第14章 氾濫


「鈴木さんをよく目で追いかけるようになって。
そしたら目にする言動ひとつひとつに、やっぱりいいなって感じることが多くて……それで、好きだなって」

「本郷くん……」

「そんな理由じゃ納得できませんか」


本郷くんの想いが私の胸を揺さぶる。
彼に気持ちはないはずなのに、そのストレートな告白にはさすがに顔が熱くなった。


「……ありがとう」


それだけを返し、俯く。

それでもやっぱり、本郷くんとのこれからなんて正直考えられない。
かといって、保険のような形で彼の存在を考えるのはどうしても気が進まない。
たとえ彼がそれを望んだとしても。


「……でもやっぱり、本郷くんのことはただの後輩としてしか見られない」


俯いたまま口にする。
彼は何も答えない。


「先生とだめだったとして……だったら代わりに本郷くん、なんてそういうのも考えられないから」


そんなこと、考えたくもないから。


「……先生?」


彼の微かな呟きを耳に捕らえ、はっと気づいた。
無意識に口にしていたその呼び方。


「先生なんですか? あの人」


案の定、そこを突かれる。


「……マジで?」


溜め息と共に漏れたようなその呟きに、私はごくりと唾を飲み込み、静かに口を開く。


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