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水蜜桃の刻
第15章 その背中
……え?
先生は今、何て言った?
私は黙ったまま、先生を見上げる。
「終わろう、もう」
「……何を?」
その言葉の意味に気づいていながらも、聞き返さずにいられない。
「この関係をだよ」
そんな決定的な言葉にさえ。
「……え? なんで?」
私は無理矢理に笑いを作りながら言った。
その笑いは引きつっていただろう。
声さえも震えていたのだから。
「……もう充分楽しんだでしょ?
俺も、透子ちゃんも」
汗がひいたのか、前を向いた先生が服を着始めた。
その背中は私に向けられたままだ。
言葉が何も出てこない。
頭の中が真っ白で。
だから私は、先生の背中だけを見つめていた。
「……じゃあ、そういうことで」
服を着終えた先生が、振り向く。
「────っ……!」
ようやく事態を理解して、手を伸ばして先生の腕を掴んだ。
「やだ……」
掠れている自分の声。
「透子ちゃん────」
「いや……!」
先生を見上げ、首を振る。
……それってもう先生に会えないってこと────?