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水蜜桃の刻
第15章 その背中


──胃が、痙攣した。


「う」


口を押さえ、立ち上がり、トイレに駆け込む。
便座の蓋を開け、こみ上げる吐き気のままに口を開いた。


「かは……あっ……」


吐くものなどさほどない。
でもえづきが止まらない。
涙がこぼれ、鼻水と唾液が顔を汚した。


苦しい。
苦しい────!


はあはあと、便器に縋るようにして座り込む。
そんな自分が惨めだった。


「……なんで……?」


突然告げられた関係の解消。
飽きたのか聞いたら、そうじゃないと言った。
だったらなぜ。


「……ひどいよ、先生っ……」


始めるときも強引で、終わるときもそうなんて……私のこと何だと思ってるの?
そういう扱いでも構わないって?

楽しんだでしょ? だなんて。
私の気持ちも知らずにそんなこと────。


「好きなのに……好きだから、なのに……」


呟きながら、こんなことになってもなぜ私はまだ先生を求めてしまうのかと、自分で自分がわからなくなる。


「先生のこと……好きなのに……」


ぽろぽろと、また涙が溢れた。



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