この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の刻
第15章 その背中
──胃が、痙攣した。
「う」
口を押さえ、立ち上がり、トイレに駆け込む。
便座の蓋を開け、こみ上げる吐き気のままに口を開いた。
「かは……あっ……」
吐くものなどさほどない。
でもえづきが止まらない。
涙がこぼれ、鼻水と唾液が顔を汚した。
苦しい。
苦しい────!
はあはあと、便器に縋るようにして座り込む。
そんな自分が惨めだった。
「……なんで……?」
突然告げられた関係の解消。
飽きたのか聞いたら、そうじゃないと言った。
だったらなぜ。
「……ひどいよ、先生っ……」
始めるときも強引で、終わるときもそうなんて……私のこと何だと思ってるの?
そういう扱いでも構わないって?
楽しんだでしょ? だなんて。
私の気持ちも知らずにそんなこと────。
「好きなのに……好きだから、なのに……」
呟きながら、こんなことになってもなぜ私はまだ先生を求めてしまうのかと、自分で自分がわからなくなる。
「先生のこと……好きなのに……」
ぽろぽろと、また涙が溢れた。