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水蜜桃の刻
第16章 覚悟
目が覚めたとき、私はソファーに横になっていた。
掛けられていたタオルケット。
え……と、見覚えのない光景に戸惑いながら、辺りを見回せば
「気がつきました?」
本郷くんの姿がなぜかそこにあり、え……? と私は戸惑った。
「ここ、鈴木さんが倒れた場所近くの会社です。
事情話したら快く休ませてくれました」
そうか私、あのまま────。
「鈴木さんを運ぶのも手伝ってくれたんですよ」
どうやら、いろいろと迷惑を掛けてしまっていたらしい。
「ごめんね……ありがとう」
お礼を言いながら、起き上がる。
「……でも、何で本郷くんが?
加奈ちゃんの声がしたとこまでは覚えてるんだけど……」
「ああ、俺、坂本さんと一緒に歩いてたんで」
「え?」
「昨日みんなで飲み行こうってなったじゃないですか。
鈴木さんは用事あるからって言って来なかったけど」
そうだった。
すでに先生との約束が入っていた私はその誘いを断ったんだった。
「みんな、車置いて電車で帰ったから。
で、朝、坂本さんと駅で一緒になったんですよ。
……坂本さん、今日はどうしても外せない仕事があるって言ったから、じゃあ俺が鈴木さんについてます、ってそう言って」
「そうだったんだ……ごめんね、本当に」
そこまで話すと、はい、と差し出された眼鏡。
ありがとう、と手を出す。
けれど本郷くんは寸前でそれを引っ込めた。