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水蜜桃の刻
第17章 その心


「……私は身体だけの関係なんて望んでなかった」


だから、先生の言葉を受けて私は答えた。


「先生とちゃんと付き合いたかった」


先生は黙っていたけど、私を見て、私の言葉を聞いてくれているように思えた。


「先生が好きだから。
だからちゃんと……身体以外でも繋がりたかった」


……言った。
好きって、再会してから初めて。

途端にどくどくとなる心臓。
今度は私が黙り込み、先生の反応を待った。


やがて静かに吐き出された、溜め息。


「透子ちゃんも合意の上での関係だと思ってたけど。
嫌だったなら何で拒否しなかったの」


私の気持ちはスルーし、そのことだけを突いてくる先生。

ねえ、と呼ばれて、私を見ている先生と視線を合わせれば


「……してないよね? 一度も」


そう確認される。

心臓の音はうるさいままだった。
先生の視線はどうしていつもこんなに私の心を騒がせるのだろう。


「初めてホテルで会ったとき、透子ちゃんもそのつもりなんだと思ったよ。
だからこんなところまで来たんだろうって」

「あれは……!」


先生が私に会いたがってくれてるんだって思ったから。
何か話があるから呼び出したんだろう、って。


「……確かに、そうなるかもしれないって思ったよ……でもそうなったとしてもちゃんと先生と想いを通じ合わせてから、って……」


ぐっ、と唇を噛む。


「だってホテルの部屋番号とか送ってこられたら、来いってことかと思ったし……こんなところに呼ぶくらいなんだから先生も私に何か話があるのかも、って……」


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