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水蜜桃の刻
第17章 その心
思わずテーブルに手をつけば、かちゃん、とぶつかったソーサー。
ゆらり、揺れる、全く減っていないカップの中のお茶。
少しこぼれてしまったそれを見つめながら
「……だって私そのときにはもう、また先生のこと好きになってたから────……」
再び、口にする想い。
「……でもまだそのときはよかった。
確かに身体の関係から始まっちゃったけど、そんなケースきっといくらでもあるしって思えた……。
これからちゃんと先生に好きって伝えよう、ってそう思ってた……でも」
まだ、揺れている気がするお茶。
途端にぽたん、と何かが落ち、そこに波紋が描かれる。
その綺麗さを見つめながら、自分の目元を指で拭った。
「でも言えなかった……だって先生が私の身体だけ求めてるのはすぐにわかったから……。
もし拒んだら先生ともう会えなくなるかもしれない、そんなのいや、って……会えなくなるぐらいならせめて身体の関係だけでもいいから繋がってたい、って思って……だから抵抗なんてできなかった……」
ああ……思い出してしまう。
あのときの気持ちをこんなにもリアルに。
感情が高ぶる。
ぽとりとまた、涙が落ちた。
「……透子ちゃんもそれなりに楽しんでたように見えたけど?」
けれど先生の言葉はやっぱり冷たい。
私を突き放してる。
ひしひしと、それを感じる。
「あんなに激しく乱れてたじゃん。
何回も俺を求めてきたでしょ」
かあっ、と頭に血がのぼる。
頬が熱くなる。