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水蜜桃の刻
第17章 その心


「それはっ……」

「なのに合意じゃないとか、なに今更────」

「ただ先生のそばにいたかっただけだよ……!」


先生の言葉を切るようにして反論した。


「いつも……いつもいつも終わったら先生はすぐ帰るから……!
それ、少しでも延ばしたくて……だからそうやって私は……っ……!」


だめ。もう止められない。
こみ上げる感情に私は飲み込まれた。


「ねえ先生……!」


私を見つめる先生のその無表情。


「想う方の気持ちはそんな簡単なものじゃないから……っ……!」


う……とたまらず漏らした呻き。
ぎりっと噛んだ下唇。
必死で涙を堪えた。

堪えながらも


「……っ……だって好きなんだもん……」


その言葉を口にする。


「私、やっぱり先生が好き……それ今も変わらないから……っだからこのまま終わりになんかしたくないよ……!」


お願い。
伝わって。
少しでもいいから、先生にこの気持ち、伝わって。

必死に、見つめた。
堪え切れずに涙が頬を伝ったけど、構わず先生を、ずっと。

けれどその無表情は変わらない。
変わらないまま、私の視線をまるで避けるように、先生の目はテーブルのカップにじっと向けられている。

静かな室内に、ひっく……と私のしゃくりあげる声だけが時折響く。


……空気が、張り詰めていた。



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