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水蜜桃の刻
第17章 その心
「……っ、何なんだよ……」
突然、吐き捨てるように口にした先生。
テーブルの上の手が、ぎゅっと握られる。
私に視線をぶつけてくる。
私はそれを逸らさずに受け止めた。
その視線は決して優しいものではないのに、先生の無表情が崩れ、その目が私に向けられたことがなぜかとても嬉しかった。
先に逸らしたのは先生。
深く長い息を吐きながら
「……調子狂う」
ぽつりと、こぼす。
「何なの今日。いつもと全然違うんだけど」
……それは、だって。
「……だってもういい子はやめたから」
「は?」
意味がわからないといったような表情をする先生の腕から、そっと手を離した。
離された部分をじっと見つめる先生を、私は見つめる。
それからそっと立ち上がり、冷めてしまったお茶をトレイに乗せる。
キッチンに運べば、先生の視線だけが私についてきた。
洗剤をスポンジに取り、カップを洗う。
ふわりと漂うのは甘い香り。
手を動かしながら白い泡を見つめる私は、一方で先生の視線を感じ続けていた。