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水蜜桃の刻
第17章 その心
「私から連絡があったら……どうしようと思ってたの?」
その質問に、時間を置いて溜め息と共に先生は言った。
「……わからない」
「え?」
「だからわかるまで会ってみようと思った」
「先生……」
「何で俺は、あのときそう思ったのか。
俺はこれからどうしたいのか」
そんなの。
先生、ねえ……そんなの。
その期待は当たってる?
当たってて欲しい。
先生は……もしかして────。
想いを込めて見つめる私の目を、けれど先生は逸らした。
そしてさっきから自分が掴んでいる私の手を見る。
「……それで?」
私は静かにその先を促し、それで……と先生は繰り返す。
「会い始めたらすぐに、透子ちゃんの言動から感じた」
私の言動から?
……何を?
微かに首を傾げれば、先生の視線が再び私の目へと戻される。
「10年前と同じものを」
「え?」
目を細めるようにして先を促せば、その答えはすぐに口にされた。
「俺に対する気持ちを」
私の頭の中を見透かすような……否定などあり得ないと確信しているような、そんな鋭さをも感じさせる言い切り。
……さっきから私と先生は互いに、戸惑い、かと思えば戸惑わせ、その心を揺さぶり、時に揺さぶられる──そんな危うい状態を行ったり来たりしているのだと、ふと思った。
そして、ほらまた。
先生がいま、主導権を握る────。