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水蜜桃の刻
第17章 その心
「透子ちゃんには、俺みたいな男より、もっと透子ちゃんを大事にしてくれる奴の方がいい。
今更だけど、あの彼とか?
……奪うように俺のものにしたくせに。彼とは付き合わないと言わせて満足したくせに。
なのに眠ってる透子ちゃんを見ていたら、そんなふうに考えたりした。
あんなふうに好きって感情をあからさまに表に出せる彼は、俺と違ってきっと透子ちゃんを大事にしてあげられるんだろうな、とか……さ」
先生を見つめて必死に首を振る。
だって別に私は大事にしてくれる人が欲しいわけじゃない。
私が、欲しいのは────。
「……俺には透子ちゃんは真っ直ぐすぎる。
健気すぎて正直どうしたらいいかわからなくなる。
そしてきっとそんな俺は透子ちゃんを苦しめる。
ずっと適当な関係だけで過ごしてきた俺とは……何て言うか、何もかもが違いすぎると思った」
違わない……!
そんなの、違わないのに。
私は真っ直ぐでも健気でもない。
先生からはそう見えたとしても、私は自分のことをそんなふうに思ってない。
「……なのにさ」
先生の、深い溜め息。
「俺から全然離れようとしない」
「だってたとえ身体の関係だけでも、先生を失うよりは良かったから……!」
思わず言葉を荒げた私に、先生は、ああ……と頷いた。
「そんなところまで健気だなんて想像もしてなかったよ」
私を見ずに、俯いてまた吐いた深い息。
私は先生を見ているのに、その視線を合わせてはくれない。