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水蜜桃の刻
第17章 その心


「……ひどい……」


俯いたまま、口にする。


「わかってる」


先生は静かに答える。


「わかってない」

「……わかってるって」


繰り返すその言葉に、私はたまらず顔を上げた。
俯いて私から視線を逸らしている先生を見て。


「先生は何にもわかってないよ……!」


真っ直ぐに、言葉を投げつける。


「解放してやらないと、って何?」


先生、見て。


「逃がしてあげたって、何?」


私を、見て?


「私はそんなこと望んでなんかない……!」


ようやく届いたその視線。
私を見る先生の目は静かで……でもどこかやっぱり揺れてて。


「……俺は駄目、って何?」


ねえ、先生。


「何でそんなの先生が勝手に決めるの?」


ひどいよ、そんなの。
私の気持ちを無視して、ひとりで勝手に決めるなんて。


「決めるのは先生だけじゃない……私もでしょ?」


先生に、手を伸ばす。

届かない。

だから一歩、進んだ。



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