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水蜜桃の刻
第17章 その心
「馬鹿にしないで」
もう、一歩。
黙ったまま私を見ている先生に向かって。
「私はもう子供じゃないよ?
10年前とは違うの。もう大人なんだよ?
……自分のことは自分がちゃんと決めたい」
先生の腕に指先が触れる。
欲しい。
先生が欲しい。
衝動が、沸き上がる。
先生の気持ちはもうわかってる。
先生はきっと、私のことが好き。
また会えた、そう思ったのも。
面倒だと思わなかったという、私の想いも。
本郷くんへのその、嫉妬も。敵対心も。
始まりが無理矢理に近かった、あのときのセックスも。
俺は駄目だと思う、その心も。
私に先生を諦めさせるために続けた身体の関係も。
私を解放するためだったという、あの突然の言葉も、全部。
全部──私に対する想いからだというのなら。
なら。
だったら。
「お願い、先生」
私の想いを。
先生が欲しいというこの想いを。
「私は……先生が好き。
どうしたって先生が好き。
先生以外なんて考えられない……!」
どうか。
「駄目とか、どうとか。
そんなの先生が決めないで!」
お願い、もう拒否しないで。
「……先生もほんとは私のこと」
目を細めるようにして見てくる先生のその表情。
否定はされない。
だから私は続けた。
「私のこと、好きでしょう──!?」
掴んだ、先生の腕。
……ああ、と。
やがて発せられた、吐息のような肯定の言葉。
耳にした私の中の感情が爆発した。