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水蜜桃の刻
第17章 その心


でも


「……駄目」


返されたのはそんな言葉。


「え……」


まだ至近距離にある先生の顔。
唇と唇は数センチしか離れてないのに。
すぐ、触れ合えるほどなのに。


「何で、っ」


何で、駄目なの────?

 
「……さすがに、そこまでは時間的に無理」


あ……と、その言葉に少しだけ我に返る。
そうだった。先生はこれから仕事があるんだった──それを思い出し、火照る身体と荒い呼吸を感じながらも俯いて唇を噛んだ。


「ここから先は……そう簡単に止めらんなくなると思うから」


頭の上でそう呟かれ、瞬時に想像した私の顔が熱くなる。
掴んだままの先生の服。さらに強く握った。


「……仕事終わったら連絡する」


続けて降ってきた、その低い声。
それは、夜……会えるという意味?


「ちゃんと話そう。またそのときに」


その疑問の答えになる、続けられた言葉。
こくんと頷いて、少し、そのままでいた。

やがて先生の手が、私の頬に触れてきて。
優しく撫でてくれたから……私は静かに顔を上げた。


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