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水蜜桃の刻
第17章 その心

「……先生……」
呟けば、ん? と目で問うてくる。
「私に……ひいてない?」
「え?」
健気に見えた私が気になったという先生。
好きだと、肯定してくれた先生。
でも、こんな……感情を剥き出しにしてしまった自分に今さらながら、不安になる。
「こんな私の姿、幻滅したんじゃない……?」
その言葉に、先生は本当に少しだけ、ふっと笑った。
「透子ちゃんって……そういうとこあるよね」
「え……?」
「おとなしそうで、真面目そうなのに……突然ぐいぐいくるっていうか。
……さっきもだけど、ほら……10年前も」
ふ、と少しだけ上げられた片側の口角。
その笑い方は、私の心を……身体の奥をどうしようもなく刺激する。
好き、って思う。
何度でも。
「先生は……やっぱり、いい子の方が好き?」
その気持ちのままに問いかければ、は……、と先生は少しだけまた笑った。
「いい子はやめるってさっき言ってたくせに」
「そうだけど……っ……!」
……それは、だって。
まさか先生が私を受け入れてくれるなんて思ってなかったから。
「……透子ちゃんに振り回されるのは悪い気はしないってだけ、言っておくよ」
「え?」
振り回してる? 私が?
「……振り回されてるの私の方だと思うけど……」
少し不満そうに口にすれば、また、笑う。
先生の、その笑顔。
また見られるなんて。
……どうしよう。
私の気持ち、本当に先生に伝わったの?
先生は、私の気持ちを受け入れてくれたの?
あのキスが、その証拠?
この笑顔が、すべて?
今さらながら、混乱していた。
この、まさかの展開に。

