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水蜜桃の刻
第18章 陶酔

「……なってるよ、もう」
そして、そんなことを。
「いつの間にか、もうそうなってた」
「先生……」
「……だからこそこんな俺とじゃなくて、誰かいい奴と幸せになってくれればいいと思ったけど────」
その言葉を言い終わらないうちに首を振る。
先生はそんな私を見ながら言葉を続けた。
「……ああ。今はわかってるよ。
透子ちゃんが俺以外の男は考えられないって言ってくれたこと、ちゃんと覚えてる」
真剣な目が、私を見ている。
黙ったまま見返せば、やがて先生の唇が静かに開かれて……あのあとずっと私のことを考えてたと、そう口にする。
「先生……」
どきどきする、胸が。
先生から目が逸らせない。
「……退かなくていいんだね?」
そうして、そう、先生は。
そんな……たまらなくなる言葉を、私に。
「こんな俺で、本当に」
「……っ、何回も言わないで!」
たまらず、先生に抱きついた。
「先生がいい……先生じゃなきゃやだ……!」
口にすれば、なんだかもう泣きそうで。
それでも私は何度も伝えた。
先生だけ、私には先生だけだから──それだけを、ずっと。
耳元で、先生が深く息を吐く。
「もう、逃がしてあげられないよ?」
その言葉に、心臓が早鐘を打った。
だって、なんて……なんて嬉しい言葉だろう。
求めていた以上のものを与えられ、私の心は高ぶった。

