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水蜜桃の刻
第19章 その言葉
「他の人と、してないの?」
そんな私の問いかけに、苦笑いをこぼす先生は
「嘘ついてどうすんの」
再び私に視線を流しながらそんな言葉を口にした。
「だって……」
まだ心のどこかで、先生とこうなっていることが現実じゃないような感覚。
はっきりと、私は特別な存在だとその口から告げられても……本当に? と思わずにいられない。
先生とあんなことになったあと、どうせ終わってしまうのならせめて気持ちをちゃんと先生に伝えてからにしたいと……ちゃんとふられないとこれから先もきっと想いを引きずってしまうと、そう思って動いた結果、まさかの先生の想いを知った。
その優しさを知れた。
なら、私を受け入れてほしいと。
私のことを想うから手放すのではなく、私のことを想うならちゃんと最初から始めてほしいと──私を本当の意味で受け入れて欲しいと願い、そうしてそれは叶えられ、ここで今、先生の隣にこんなふうに私はいる。
それらはすべて、今日の出来事だ。
朝と夜で、180度変わってしまった私たちの関係。
あまりにも、それは急すぎる展開だったから、まるで夢みたいな気さえする。
だけど──これは夢じゃない。